コラム

【インタビュー】新興国市場で日本企業の未来を切り拓く――コンサルと投資、両輪で挑むアジア・アフリカ市場開拓の最前線

日本企業のグローバルサウス進出をサポートし、新興国市場のダイナミズムを日本へ還流させていく。2008年の創業以来、この志を一貫して掲げ、アジア・アフリカの新興国市場に特化したコンサルティングを軸に、自社ファンドによる投資へも領域を広げてきたのが、AAIC(Asia Africa Investment & Consulting)です。
AAICは、机上のレポートを提出して終わる一般的なコンサルティングファームではありません。戦略の立案から、現地での地道な調査、自社ファンドを連動させた資本提携、さらには現地での採用支援や事業の立ち上げ・運営支援に至るまで、新興国で事業が立ち上がり収益が生まれるまで一気通貫でコミットする、ユニークなプロフェッショナル集団です。
今回は、同社でアジアユニットを率いる難波氏と、総合商社から「より大きな裁量とスピード」を求めて転職した徳山氏、そして政府系金融機関から大手戦略ファームを経て参画した渡邉氏にお話を伺いました。「コンサルティングと投資(ファンド)の融合」、そして新興国の打席数で磨かれる「本当の実行力」の実態について、丁寧にお伝えします。

1. 知恵・金・人を融合する――アジア・アフリカに特化した「三位一体」のビジネスモデル

――まず、AAICが掲げる独自のポジショニングと、アジア・アフリカに特化した背景について教えてください。

難波氏(以下、難波):
私たちは、社名の通り「アジアとアフリカ」に特化して、コンサルティング事業と投資事業を両輪で展開しているファームです。コンサルティング事業において、現在の社内における案件やリソースの比重はアジアとアフリカで半々程度です。
弊社が他の一般的なコンサルティング会社と異なると考えているのは、創業以来掲げている「知恵」、「金」、「人」を融合させた三位一体のビジネスモデルをとっている点です。
実はアジアよりも先にアフリカで1号・2号ファンド(ヘルスケアへの投資をメインとするVC)を設立しました。さらに、アフリカ現地には6つの拠点を構えていますが、そのうちルワンダとタンザニアの2拠点では、自社事業として「コーヒー農園」と「マカダミアナッツ農園」を実際に運営しています。
「コンサルティングを主軸としながら、アフリカ現地に6拠点あって農園まで自社経営している会社」は、おそらく他にはないのではないかと思います。本質的にアフリカにおけるピュアなコンサル案件の市場自体はまだそれほど多くありませんが、「アフリカといえばAAIC」という認知をいただいているため、ありがたいことにお声がけをいただく機会が非常に増えています。
一方、アジアに関しても18年前から継続して手がけており、現在は東南アジアに留まらず、インド市場からの引き合いが非常に増加しているのが現状です。

――日本企業のグローバルサウス進出を支援する際、どのような企業から、どういった相談が持ち込まれるのでしょうか。

難波:
クライアントの多くは、すでに現地に進出しているか、あるいは新規に進出したいと考えている日本企業です。業界の偏りはあまりありませんが、上場・非上場を問わず、売上数兆円を超える大企業に加え、売上数百億円から数千億円規模のニッチトップで、「意思決定がスピーディーなオーナー系企業」からのご相談も多い点が特徴です。こうした企業は、調査だけで満足して終わるのではなく、「いける」と判断すればその場で経営判断を下して次のアクションへ進むスピード感があるため、私たちのスタイルと非常に親和性が高いと感じています。
また、過去に一度ご一緒させて頂いたクライアントの進出が、例えば、中国から始まり、数年後に東南アジア、そしてインド、アフリカへと西へ西へとリピートしていく傾向も見られます。このように、新興国の最前線へ先回りして、戦略から地道な現地実装までを一貫して伴走するのがAAICの役割となっています。

2. デスクリサーチを超えて――新興国の現場で事業をカタチにする実務のリアル

――単に戦略を描くだけでなく、現地に入り込む実行支援の実態について、具体的なプロジェクト事例を教えてください。

難波:
私がAAICに参画するきっかけとなった、ベトナムでのショッピングモール参入プロジェクトは分かりやすい事例かと思います。当初、マーケティングチームは、クライアント企業の担当者様と私の2人きりでスタートしましたが、現地に1年近く滞在し、クライアントのバリュープロポジションを明確化したうえで、マーケティング戦略を策定し、その実行まで一貫して支援したようなプロジェクトです。
具体的には、当時黎明期にあったSNSを活用したデジタルマーケティング施策の立案・実行に加え、テレビ番組の企画・制作など、オンライン・オフラインを組み合わせた統合マーケティングを推進し、ショッピングモールの認知度向上と集客強化に取り組みました。
現地に法務部もいない立ち上げ初期のフェーズでしたから、紙に印刷されたベトナム語の契約書を、Google翻訳にコピペすらできない状態から無理やり解読するなど、苦労に堪えない案件でしたが、オープン初日に15万人もの現地の人々が来場する大成功を収めることができました。現地の人波を見た瞬間の手触り感、そして日本企業とともに新興国の成長に乗っていく実感こそが、この仕事の面白さであると感じています。
他にも、インドにおける大手サプライヤー(部品メーカーなど)の進出支援では、単独でインドに行っても仕事になりにくいという課題に対し、市場調査や戦略策定に加え、現地に入り込んで初期の新規顧客開拓・営業活動そのものまで私たちがフロントに立って伴走させていただくようなケースもあります。

――商社や戦略ファームから転職された徳山さん、渡邉さんの直近のプロジェクトはいかがでしょうか。

徳山氏(以下、徳山):
私は先日、2ヶ月間にわたる「インドにおけるニッチ産業の市場環境・競合調査」を完了しました。デスクトップリサーチやオンラインでの打ち合わせから開始したのですが、実際の工場を持つ現地企業がターゲットだったため、5月に1週間、現地出張(デリー3日間、ムンバイ3日間)を実施しました。
ウェブサイト上では非常に整って見える工場でも、実際に現地を訪れることで、「オペレーションが乱雑で提携は難しそうだ」「運営体制がしっかりしており、一緒に取り組めそうだ」といった実態を、クライアントとその場で共有・確認することができました。現地で認識を揃えられたことで、現在は単なる調査報告にとどまらず、今後の実行支援フェーズへの移行を見据えた具体的な協議を進めています。


渡邉氏(以下、渡邉):
私は現在、アフリカ参入関連で、メーカー様の案件を2つ並走して支援しいます。
1つ目は、日系医薬品メーカー様の商品を現地へ持っていくプロジェクトです。アフリカの医薬品ビジネスは、そもそも明文化された規制が曖昧であったり、手続きが不透明な世界です。ここで、いかに「信頼できる現地代理店」を見つけるかが鍵になるのですが、AAICのシンガポール・アフリカファンドチームが現地で実際に投資し、深く見聞きしている『本当に信頼できる優良現地ネットワーク』の知見を横串で共有してもらい、連携しながら交渉を進めています。
2つ目はさらに進んだモデルで、代理店を通すとマージンが取られリスクも高いため、直接現地にブランドショップを出店し、自社で運営まで行う案件です。AAICが現地でスタッフを直接雇用し、営業から店舗運営・管理までを丸ごと代行する(運営代行)という、戦略ファームではなかなか踏み込まない領域まで入り込んで実行支援を行っています。

3. 事例からわかるAAICで求められるスキル/マインドセット

――お話を伺っていると、通常のコンサルタントに必要なスキルとは少し異なる次元の要素が必要だと感じます。AAICで活躍するために必要な要素とは何でしょうか。

難波:
一言で言えば、私たちが社内でよく使っている「戦闘力」、確固たる「当事者意識」ではないかと思います。
大前提として、戦略コンサルタントとしての高度な論理的思考力や、ゼロから精緻なビジネスの仮説・戦略を組み立てる基礎能力は必須です。しかし、我々のフィールドではそれだけでは通用しません。
新興国ビジネスは、戦略、財務、M&A、そして何より現地での生々しい実行力が求められます。 例えばアポ取り一つとっても、新興国で1ヶ月前にアポを確定させても、直前で現地企業からは忘れられて流れてしまうことが多々あります。そのため、1週間前や、場合によっては現地に入ってから直接携帯電話から電話をかけ、「明日行きます!」とアポをこじ開けていくような臨機応変さが必要になります。

徳山:
インドの現場もまさにそうしたタフさがありました。一人一人のキャラクターが濃く、会議では現地の方々が積極的に話し続けることも少なくありません。その流れをしっかりとアジェンダに沿って引き戻し、軌道修正して聞きたい情報を引き出す粘り強さが必要になります。
さらに、現地では平気で「2時間遅らせてほしい」「訪問を来週月曜日にしてくれないか」と言われますが、「来週はもうインドにいないから、このスロットで意地でもやってくれ」と無理やりねじ込むような、何が何でも現場で解決手段を見つけて「事をやり切る」マインドセットがないと、新興国では一歩も前に進めないと感じています。

難波:
 「相手がスケジュールをキャンセルしたから終わり、以上です」というスタンスでは、新興国でのバリュー創出は難しいと思います。「何とかしようと現地で調整し、別の角度から面白い会社を見つけてくる」というレベルまで、クライアントの成果に対してオーナーシップを持てるかどうかが大切です。

――身体的なタフさや、ストレス耐性も独特なものが求められそうですね。

難波:
過去の化粧品メーカーの買収案件の際は、1週間の出張中、毎日夜に移動し、ご飯はすべて走る車中や飛行機の中で食べながら、5都市を回って毎日3~4面談をこなす、というハードなスケジュールでした。 大手のファームで求められる体力とはまた違った意味での、「胃が強い」「環境変化に対する特有のストレス耐性がある」といった要素も、事実として必要になります。
歯磨きをペットボトルの水でするなどの最低限の警戒は基本ですが、私の場合は現地に適応するために、あえて水道水で歯磨きをして腸内細菌を現地っぽく変えておく、ということを少しずつ試したりしています(笑)(※短期出張のお客さんには絶対に勧めませんが)。それくらい現地の予期せぬ環境変化を「前向きに楽しめる」マインドセットが不可欠であると考えています。

4. 体系的なスキルを武器に、世界と対峙する――AAICが歓迎する人物像

――現在、大手コンサルファームや総合商社にいて、現職にモヤモヤを抱えている候補者に向けて、AAICが提供できる環境の価値と、どのような人を歓迎しているかを教えてください。

徳山(商社出身):
大企業の本社勤務時代、社内の複雑な申請や稟議を通すためだけに膨大な説明資料を作り、何回も事前レクチャーを重ねるような「社内調整」に忙殺され、自分の成長スピードに焦りを感じていた時期がありました。
AAICでは、上司の難波にSlackで1行「ここでいいですよね」と送れば、一瞬で「いいよ」「もっとこうしよう」と完結し、すぐに次のアクションに移ることができます。すべての時間をクライアントファーストに使い、自分で主体的に仕事を動かしたい商社出身者には非常に適した環境だと思います。私は前職の出向時代にミャンマーで会社の経営に関わり、大きい裁量の面白さを知りましたが、AAICにはまさにその時求めていた、30代の環境でさらに個人の力をつけられる環境があります。

渡邉(戦略ファーム出身):
日本の戦略ファームでは、どれほど美しい戦略を描いても実行フェーズはお客さん任せになりがちで、事業の本当の当事者になれないもどかしさがありました。また、「インド市場の調査」となっても、実際の主要なリサーチは現地オフィスが担い、日本側は一部の断片的なパートしか触れないという役割分担に限界を感じることもありました。
AAICであれば、全案件が基本海外、それもグローバルサウスの新興国案件です。現地のローカルリサーチャーから上がってくる、時に突飛で、極めて貴重な生情報をどう料理するかという、戦略ファームとは一味違う多様性と挑戦があります。自分で作った戦略を実行まで責任を持って進めたい人、世界と直接戦いたい人にはこれ以上ない打席になるはずです。

――若手へのチャンスの与え方、長期的キャリアや退職者のキャリアパスについてもユニークな傾向があると伺いました。

難波:
私たちは、戦略ファームとして求められる地頭や英語力に加え、「新興国が好きでお客さんにコミットしたい」という志気があれば、新卒・第二新卒であっても入社後すぐにアフリカやインド、シンガポールなどへ出張に行ってもらうこともあります。本人の意思を最重視するため、「嫌でも行け」という強制は絶対にしませんが、会社の戦略方向性と合致すれば、最短で入社1ヶ月で海外駐在へ行ったメンバーもいます。
現在も、新卒4年目の女性社員が、初のエジプト駐在員として現地リサーチャーと協力しながらネットワークを開拓する準備を進めています。ちなみに、彼女の最大のモチベーションは「ラクダが大好きだから」という非常に純粋なものです(笑)。
また、AAICを卒業していくメンバーのネクストキャリアの傾向も独特です。他のコンサルファームへ移られるケースもありますが、AAICのスタイルが合っていたけれど退職する人は、より深く新興国にコミットするために現地での起業や事業立ち上げを選ぶケースも目立ちます。

  • インドで「義足販売事業」を立ち上げるために現地へ転職したメンバー
  • シンガポールに居住し、アジア圏へ「フィットネス事業」を自ら展開・拡大しているメンバー

このように、単なる外部のアドバイザーを超えて、本物の「新興国ビジネスの当事者」として羽ばたいていくルートが、自然と形作られています。

――これからの時代において、この新興国市場で得られる経験は何をもたらすのでしょうか。

難波:
教科書に載っているような知識やロジックの精度、綺麗なスライドの構成力などは、これからの時代、AIがほぼノーコストで代替していくようになるのではないかと考えています。そうした時代において、どれほどテクノロジーが進化しても絶対に価値が色褪せない要素があります。
快適なオフィスの机の前で画面を眺めているだけでは、これからの時代に生き残る市場価値は育ちません。新興国の現場へ自ら足を運び、お客様と深く関わりながら開拓し、多くの経験を積む。それによってしか得られない「現場の手触り(五感)」「泥臭い人間関係(人脈)」、長期間にわたって一緒に同じ船に乗る仲間、そして「当事者としてのオーナーシップ」こそが、あなただけの資産(戦闘力)になると確信しています。

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