「好きなことに、本気で向き合える仕事はあるのか」大手戦略ファーム出身の二人がSHAPE Partnersを選んだ理由

戦略コンサルティングのトップファームであるマッキンゼーとBCG。正統派のキャリアを歩んでいた北浦氏と山田氏は、なぜ新興ファームである「SHAPE Partners」への転職を決意したのでしょうか。
そこには、効率や論理だけでは語りきれない「個人の情熱(アスピレーション)」を軸とした、新しいコンサルティングの在り方がありました。
本稿では、まずSHAPE Partnersが描く「戦略コンサルの新機軸」について経営陣に訊きました。なぜこの組織には、プロフェッショナリズムと「オタク気質」が共存し得るのか。その背景にある独自のOSを紐解いた上で、現場の熱量そのままに北浦氏・山田氏が語るインタビュー本編をお届けします。
【Leadership Insight(経営陣インタビュー)】「戦略コンサルの力を、もっと人間らしい熱狂のために」
本編に先立ち、代表の藤熊浩平氏と、SHAPE Sports代表の駒宮健大氏に、同社が掲げる思想について語っていただきました。
1. 売上至上主義へのアンチテーゼ:「価値至上主義」の誕生
藤熊:
私は長年、戦略コンサルティングの世界で「いかにクライアントの売上を伸ばすか」に心血を注いできました。しかし、ある時気づいたんです。コンサルティングファーム自身も、その呪縛にとらわれていることに。多くのファームが売上を追うあまり、スポーツやエンタメといった「人の心が最も動く領域」を、市場規模や収益性の低さを理由に支援の対象から外してしまっていることに。 私たちがSHAPEを創業した際に掲げたのは「価値至上主義」です。世の中にとって本質的に価値のあること、「笑顔・感動・熱狂」を生む領域を全力で支援すれば、ビジネスとしての成功は必ず後からついてくる。この順序を逆にしないことが、私たちのアイデンティティです。

2. 「スポーツ×コンサル」は、なぜ機能するのか
駒宮:
私はBCGを経て、現在はスポーツ領域を管掌していますが、現場に入って痛感するのは「スポーツチームは究極の事業会社である」ということです。チケット販売からグッズ、ファンクラブ、そして命題である「勝利」のための選手育成。機能が高度化するほど、組織には部門間の壁が生まれ、意思決定が鈍ります。 私たちがソフトバンクホークス様とのプロジェクト等で証明してきたのは、「コンサルタントの構造化・言語化能力は、スポーツの現場を劇的に変える」という事実です。バラバラだった熱量を一つの「共通言語」に束ねる。それだけで、組織は再び加速し始めるんです。

3. 「アスピレーション(志)」を原動力にするプラットフォーム
藤熊:
SHAPEには、特定の領域において「オタク」と言えるほどの深い愛情を持ったメンバーが集まっています。私たちは彼ら彼女らを「リソース」とは呼びません。会社は、個人のやりたいこと(アスピレーション)を実現するためのプラットフォームであるべきだと考えているからです。 「大好きなエンタメを世界へ届けたい」「日本のスポーツビジネスを仕組みから変えたい」。そんな個人の強烈な「好き」という衝動に、戦略コンサルのプロフェッショナリズムを掛け合わせる。それこそが、既存のファームには出せない爆発的な付加価値を生むと確信しています。
こうした経営陣が描く「個人の情熱とプロフェッショナリズムの融合」という理想は、現場の最前線でどう体現されているのか。
これからご紹介する北浦・山田の両名もまた、トップファームで磨き上げたスキルを「自らの魂が震える領域」に投じることを選んだ、SHAPEを象徴するプロフェッショナルです。彼らがなぜ、あえて安定した看板を捨て、この「熱狂」の最前線に飛び込んだのか。その本音に迫ります。
【Inside SHAPE(メンバーインタビュー)】マッキンゼー、BCGを経て、たどり着いた『純粋な衝動』
佐藤:
本日はよろしくお願いします。まずはお二人のこれまでの歩みから伺いたいのですが、そもそも、最初にコンサルタントという職業を志された理由は何だったのでしょうか?
北浦氏:
私は学生時代、もともとはビジネスとテクノロジー、あるいはデジタルの架け橋になりたいという思いがありました 。幼い頃から科学やコンピューターの仕組みに興味がある理系人間だったのですが、日本企業を見ると、せっかく質の良いものを作れていても、その良さが顧客に伝わっていなかったり、ビジネス的に活用できていないという課題感を感じていて 。その「翻訳者」になるために、両方の世界を見られるコンサルを選びました 。

佐藤:
なるほど、技術の価値を最大化するための戦略、という視点だったのですね。山田さんはいかがですか?
山田氏:
僕は法学部出身で、周囲は法曹界を目指すのが当たり前の環境でした 。ただ、法律の世界というのは、決められた条文に対して「AならB」という正解を当てはめていく側面が強いと感じていて、そこにどこか面白みを感じきれずにいました。そんな時にコンサルのインターンで「問いを自分で創りに行く」というプロセスに触れ、それまでの「与えられた問いに答える」頭の使い方とは全く違うチャレンジに、新鮮な魅力を感じたのがきっかけですね 。

佐藤:
「正解を出す」ことから「問いを創る」ことへの転換、非常にコンサルタントらしい動機ですね。その後、前職の大手ファーム(マッキンゼー、BCG)ではどのような経験を積まれたのでしょうか。
北浦氏:
マッキンゼーには6年間在籍しました 。私は本当にビジネスの知識がゼロで、「PL(損益計算書)とは何か」という状態からのスタートだったのですが、会社が動く仕組みを体系的に学べたのは非常に面白かったです 。若いうちからクライアントの上位レイヤーの方々と直接やり取りする機会が多く、自然と自分の視座も引き上げられましたし、各企業にとって重要なテーマを扱える面白さを常に感じていました 。
山田氏:
僕はBCGで、とにかく社員の方々の圧倒的な「頭の良さ」に打ちのめされる毎日でした(笑) 。でも、だからこそ「この人たちと一緒に働きたい、自分もこうなりたい」という強いモチベーションが湧いたんです 。1、2年目の若手でも、何十年もその道で生きてきたクライアントと一対一で対峙し、プラスの価値を出さなければならない。知識量では勝てなくても、問いをどう立てるか、仮説をどう考えるかという、経験値の差が出にくい部分でどれだけ戦えるか。そこを徹底的に鍛えられたことが今の僕のベースになっています 。
「好きなことを仕事にする」決意 SHAPE Partnersへの転職経緯
伊井:
トップファームでの輝かしいキャリアを積みながらも、あえてSHAPE Partnersという新天地を選ばれた理由を教えてください。
北浦氏:
マッキンゼーで3年ほど経過し、一通り自分のパートを回せるようになった頃、キャリアの大きな分岐点に立ちました 。留学や海外転勤、あるいは事業会社への出向など、周囲が様々な道を選ぶ中で、改めて「自分は一生をかけて何を成したいのか」を問い直したんです 。
実は学生時代、「仕事と趣味は峻別すべきもの」と強く考えていました 。演劇や音楽はあくまで趣味として楽しみ、ビジネスの場では数字や論理を武器に戦うほうが、自分の価値の出しどころとして向いていると思い込んでいたんです 。前職でも、週末はアイドルのコンサートや演劇、お笑いライブなど、エンタメの現場を精力的に回っていました 。ただ、その話を職場ですると「いつもすごいバイタリティがあるね」「よくそんなに回れるね」といった、どこか遠巻きに感心されるような反応が返ってくることが多くて 。
佐藤:
周囲の方々とは、熱量の向け方が少し違っていたのですね。
北浦氏:
そうですね。もちろん悪気はないのでしょうが、自分の核にある情熱が、仕事の場では「少し変わった個人の特性」としてしか受け止められず、周りの人と共有できない寂しさはどこかにあったかもしれません 。そんな日々の中で、仕事の占めるマインドシェアの大きさを無視できなくなりました 。平日も週末も、結局は仕事のことが思考の大部分を占めていく実態に気づいたとき、「だったら、いっそ自分が心から愛するエンターテインメントの領域に、培ってきたスキルやエネルギーをすべて投じるべきではないか」という考えに変わっていったんです 。その後、海外オフィスへのトランスファーやジュニアマネージャー等の経験を経て、マッキンゼーにて身につけたかったスキルを得られたと感じた丸6年の節目で、キャリアを変える決断を下しました 。
佐藤:
「趣味と仕事の境界」をあえて崩すことで、自分にしかできない価値の出し方を追求されたのですね。山田さんは何が決定打となったのでしょうか。
山田氏:
私は前職のBCGで、パブリックセクターや電力、ガスといった非常に重厚な領域を支援しており、その社会的意義の大きさには確かな充足感を感じていました 。ただ、ふとした機会に携わった消費財系の短期プロジェクトで、それまでとは全く違う「心が躍る感覚」を覚えたんです 。
その時初めて、クライアントが提供するプロダクトやサービスへの共感度が、自分自身のパフォーマンスやモチベーションにこれほどまで直結するのかと驚きました 。自分が本当に「良い」と思えるものを支援することの楽しさを知ってしまったんですね 。そんな矢先、大好きな野球の領域をコンサルティングしている当社を知りました 。阪神タイガースをはじめとするプロ野球への情熱なら誰にも負けないという自負がありましたから、ここならば自らの知性と情熱を完全に一致させられると確信しました 。
伊井:
長年の想いが結実したのですね。ただ、マッキンゼーやBCGといった巨大な看板を離れることに対し、最終的な意思決定において不安や迷いはありませんでしたか。
北浦氏:
マッキンゼーを離れることへの不安や迷いというよりは、エンタメをキャリアの主軸にしたい思いが先行していたので、当初はコンサルではなく事業会社への転職を検討していました 。ですが、特定の会社の一員になると、どうしてもその会社が持つサービスや領域にしか携わることができません 。私はライブエンタメという領域全体を俯瞰し、多様なプレイヤーの方々と関わって業界全体を変えたいという気持ちが強いことに気づきました。SHAPE Partnersというプラットフォームであれば、コンサルタントとしての専門性を維持したまま、大好きな業界に対してより深く、多角的な貢献ができると考え、SHAPEへの参画を決意しました。
山田氏:
私の場合は、転職を「看板を下ろす」という後ろ向きなものではなく、「より良質な成長環境への部署異動」に近いポジティブな感覚で捉えていました。コンサルタントとしてさらに高い壁を越えようとする時、無理に自分を律して働くよりも、心から心躍るテーマに邁進できる環境に身を置くほうが、結果として自分の成長角度も最大化されるはずだと判断したんです 。周囲には「そのブランドを捨てて大丈夫か」と心配する声もありましたが、僕自身は全く気になりませんでしたね 。
顧客体験を軸に、エンタメの深淵に挑むプロジェクト
佐藤:
入社後、特に印象に残っているプロジェクトについてお聞かせください。
北浦氏:
演劇会社と共に取り組んだ、歌舞伎のマーケティング戦略策定プロジェクトです 。私自身演劇好きで、月に何度も劇場へ足を運ぶ熱心なファンでもありましたので、歴史ある演劇会社のご支援ができることは無上の喜びでした 。伝統芸能という、これまで勘と経験が重んじられてきた世界に、消費者調査や顧客インタビューを通じた戦略的アプローチを導入する 。正月の全面新聞広告といった具体的なアウトプットに至るまで、一気通貫で伴走できたことは非常に意義深い経験となりました 。
山田氏:
私はテーマパーク会社における、現場スタッフの配置最適化プロジェクトです 。ともすれば「コスト削減」というドライな議論に陥りがちなテーマですが、我々のアプローチは異なります 。まず「ゲストが園内体験のどこに真の価値を見出しているのか」という顧客体験の核を特定し、その満足度を最大化させるための最適配置を設計しました 。体験価値の向上と、現場の働きやすさを両立させる。この思想こそがSHAPE Partnersの真骨頂だと痛感しました 。
「和気あいあい」としたオタク文化とアスピレーション
佐藤:
お話を伺っていると、組織としてのカラーも非常に鮮明ですね。
北浦氏:
一言で表現するならば「和気あいあい」とした組織です 。ただ、それは単に仲が良いという意味ではなく、各自が特定の分野に深い専門性と愛着を持つ「オタク」の集まりだからこそ、お互いを尊重しながら学び合って視野を広げられる関係性になっています。演劇、アイドル、キャラクターなど、各自が好きな分野は多岐にわたり、共通言語で深く語り合える環境は非常に刺激的です 。

山田氏:
皆、自分の中に揺るぎない拠り所を持っているため、他人と不必要に競い合うことがありません 。その自己肯定感の高さが、組織全体の穏やかさと心理的安全性を生んでいるのだと感じます 。
佐藤:
「アスピレーションファースト」という理念についても、その意味するところを伺えますか。
山田氏:
これはメンバー個人の志(アスピレーション)を起点に事業を展開するという方針です 。特定の案件に人を当てはめるのではなく、例えば「半導体を変えたい」という強い志を持つ者がいれば、その領域を開拓していく柔軟性があります 。個人の「やりたい」というエネルギーを、組織として最大限にバックアップする仕組みです 。

SHAPE Partnersの働きやすさ
インタビュアー:
働き方の面ではいかがですか? 特に女性の方はライフイベントとの両立を気にされる方も多いと思いますが。
北浦氏:
ワークライフバランスはかなり改善されました。前職では巨額の売上を誇る企業の全社戦略など、極めて抽象度が高く作業量も膨大なテーマが主でしたが、現在はプロジェクトの射程がより明確です。自身の引き出しを効率的に活用できるため、仕事の密度を保ちながらも、時間的なコントロールが非常に容易になりました。自らタイムラインを設計できるため、平日夜にも頻繁にライブ鑑賞に行くなど、仕事と趣味を両立しやすくなりました。趣味としてライブや演劇を鑑賞する時間も、今後の仕事へのインプットとなると思えば、足を運びやすくなったのも嬉しい点です。50%稼働やフルリモートの社員もおり、今後ライブイベントがあっても、柔軟に働き方を変えられるイメージがあるのも安心感がありますね。
佐藤:
山田さんはいかがですか? 前職での「思考のタフネス」を求められる環境と比較して、今の環境をどう捉えていらっしゃいますか。
山田氏:
そうですね……前職での時間は、今振り返っても本当に貴重な修行の場でした。ただ、当時は常に細部まで高い基準で見られているような、独特の張り詰めた緊張感があったのは事実です。それは、世界トップクラスの品質を担保し、クライアントに対して妥協しないというプロフェッショナルとしての誠実さの裏返しでもあったと思います。一方で、若手としては常に高い期待に応え続けることが求められ、精神的な余裕を持ちにくい側面もありました。
佐藤:
ありますよね。私も心当たりがあります(笑)

山田氏:
はい。もちろん今の仕事でも品質への妥協はありませんが、SHAPE Partnersでの働き方は、より「本質的」なのではないかと感じています。組織構造が非常にフラットで、たとえば社内調整を目的とした資料作成に時間を割く場面が少なく、本来的に必要なことに集中しやすい環境です。インターナルな議論も非常に効率的だと感じています。
佐藤:
「本質的」というのは、具体的にどういった感覚でしょうか。
山田氏:
「誰かに評価されるために働く」のではなく、「クライアントとファンを喜ばせるためにどう動くか」という一点に、チーム全員が等身大で向き合えている感覚です。心理的安全性が非常に高いので、余計な緊張感にエネルギーを削られることがありません。裁量が大きく、自分で意思決定できる範囲が広いからこそ、責任の重さはありつつも、それを心地よいやりがいとして楽しめている。これが、結果として生産性の向上と、プライベートの充実に繋がっているのだと思います。
日本のエンタメ・カルチャーを世界へ
伊井:
最後に、お二人が今後5年から10年を見据えて成し遂げたい「野望」を、余すところなくお聞かせください。
北浦氏:
私は大きく3つの目標を掲げています。 第一に、ライブエンターテインメントの裾野を広げることです 。ニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドのように、観光客が日常の一部としてふらりと劇場に立ち寄れる環境を日本でも構築したいと考えています 。現在はコアなファンに支えられている構造ですが、もっと多くの方が気軽にアクセスできる共通のプラットフォームを整備し、利便性を向上させたいです 。
第二に、業界構造の抜本的な改善と、労働環境の適正化です 。エンタメ業界の持続可能性を高めるためには、現場の方々の献身に依存するのではなく、健全なビジネスサイクルを構築することが不可欠です 。
そして第三に、日本の優れたコンテンツを、戦略的に海外へ届けることです 。特に有力なIPとリアルのライブ体験を融合させ、グローバルで戦える興行モデルを確立したい 。これらを通じて、かつての私が様々なコンテンツに救われたように、同じような体験を世界中の人に届けたい、そして日本のプレゼンスを高めていければと思っています 。

佐藤:
単なる理想論ではなく、業界構造やビジネスとしての持続可能性まで踏み込まれている点が印象的でした。特に「日常の中にライブ体験を組み込む」という視点と、日本発コンテンツをグローバルで戦える形に昇華させるというお考えは、まさにこれからのエンタメのあり方そのものだと感じました。山田さんはいかがでしょうか。
山田氏:
私は日本のデザイナーズブランドの価値を、グローバル水準まで引き上げたいと考えています。日本の縫製技術やクオリティは世界最高峰でありながら、ブランド力の面ではまだ伸びしろがあり、欧州のラグジュアリーブランドと比較するとその価値が価格に十分反映されていない現状があると感じています。
隣国の韓国がカルチャーの力を巧みに活用し、自国のファッションを「憧れの対象」へと昇華させたように、我々もプロダクトの質の高さだけに甘んじるべきではありません 。カルチャーの力と掛け合わせ、「日本のアパレルを纏うこと自体がステータスである」という新しい空気感と、強固なブランドストーリーを構築していく 。その先導役を担いたいと願っています 。
佐藤:
日本のアパレルが持つポテンシャルを、グローバルな文脈で再定義していくという視点は、まさに産業全体の価値を引き上げる挑戦だと感じました。
「好き」という純粋な衝動を、コンサルティングの技術で社会的なインパクトへと変えていく。お二人のアスピレーションが、日本の未来をより彩り豊かなものにしていくことを陰ながら応援しております。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
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