はじめに:戦略コンサル出身者のキャリアパスの多様化
かつて戦略コンサルティングファームは「エリート街道の象徴」として、外資金融やMBAと並び、選ばれしビジネスパーソンの登竜門とされていました。そして戦略コンサルでの数年を経て、いわゆる「王道の出口」へと進むのが定石とされてきました。具体的には、PEファンドへの転職や、欧米有名MBAを経由した事業会社へのCxOポジション就任といったパスです。
しかし、2020年代に入り、出口戦略の選択肢は急速に多様化しています。背景には、以下のような要因があります。
- 戦略コンサルの大量採用により、毎年数百名単位の人材が流出する構造になった
- スタートアップや事業会社がコンサル出身者を積極採用し始めた
- 「自分の軸で生きる」価値観の浸透と、ライフスタイル多様化
本稿では、戦略コンサル出身者がどのような出口戦略を描いているのか、主要なパターンを整理しつつ、それぞれの特徴や求められるスキルセットを解説します。加えて、近年のトレンドや実際の成功事例も交えながら、アラサーでキャリアに悩むビジネスパーソンに向けた示唆を提供します。
第1章:戦略コンサル出身者の主な転職先とその特徴
以下は戦略コンサル出身者が多く進む出口カテゴリと、その概要です。
| 転職先カテゴリ | 概要 | 求められる強み |
|---|---|---|
| 事業会社(企画・経営ポジション) | 大手・準大手企業の経営企画、新規事業、CFO直下など | 論理的思考力、PPT資料作成力、定量分析能力 |
| スタートアップ/ベンチャー | シード〜シリーズC程度の企業で経営企画やCxO補佐、または起業 | カオス耐性、事業構想力、泥臭さ |
| 投資ファンド(PE/VC) | モデル構築、投資先支援、DD業務を担当。IBDと並び伝統的な出口 | 財務モデリング、ビジネスDD力、投資視点 |
| 他のコンサル(総合・専門) | 業界や領域特化型のコンサルに転身し、ワークライフバランスを改善 | 業界知見、プロジェクトマネジメント力 |
| 公的機関/NPO | 官民連携、社会課題解決、地方創生案件等に関わる道 | 社会的使命感、ステークホルダー調整力 |
傾向と補足
- 事業会社への転職は依然として最も多く、特に経営企画やデジタル戦略ポジションに人気が集まります。
- スタートアップ転職は、年収が落ちるケースもありますが、自由度と成長実感を重視する層には好まれています。
- PEファンドは採用枠が少なく、選抜性が非常に高いため、トップ層の戦略コンサル出身者のみに限定される傾向があります。
第2章:転職先選定のポイントと自己分析の重要性
出口の選択は、自分の「志向性」や「キャリアビジョン」と一致しているかが重要です。以下の観点での自己分析がカギを握ります。
自己分析の3軸
- 価値観(What)
何にやりがいを感じるか。社会貢献、裁量、年収、専門性など。 - 志向性(How)
どんな働き方をしたいか。スピード感、安定性、自由度、個人裁量の有無。 - 強み(Skill)
自分は何ができるのか。ファクトベースで強みを言語化することが重要です。
事例:自己分析から見えたキャリアパスの明確化
例えば、「ロジカルに戦略を立てるのは得意だが、成果に結びつく手触りが欲しい」と感じたある30歳の戦略コンサル出身者は、事業会社の新規事業開発部門に転職しました。意思決定スピードの速さと、自身の提案が実際の売上に反映される経験が、やりがいにつながったといいます。
このように、「自分が何をしたいのか」「何に満足を感じるのか」を丁寧に掘り下げることが、納得感のあるキャリア選択には不可欠です。
第3章:戦略コンサル経験が評価される理由と市場価値の向上
戦略コンサルで数年経験を積んだ人材は、いわゆる「構造化された問題解決スキル」「プロフェッショナルな仕事の進め方」を身につけています。これが評価される理由を以下に整理します。
| 評価されるスキル | 具体内容 |
|---|---|
| ロジカルシンキング | 構造化、MECE、仮説思考をベースに物事を考えられる |
| ドキュメンテーション | スライド資料を端的かつ美しくまとめられる |
| ファシリテーション | 多様なステークホルダーとの会議を円滑に進行 |
| 高いアウトプット密度 | 短時間で高精度の成果物を出す力 |
| 精緻なリサーチ力 | 二次情報を元に迅速に意思決定材料を提示 |
さらに、近年は「即戦力かつ非属人的」なスキルセットへのニーズが高まっており、コンサル出身者の市場価値は一段と上昇しています。特に、DX、M&A、事業再生といった高度で横断的なテーマでは、その価値は群を抜いています。
第4章:キャリアパス選択時の注意点と成功事例
一方で、戦略コンサル出身者にも落とし穴があります。
よくある失敗パターン
- 「看板」で選んでしまう
→ PEファンドや外資大手などのネームバリューに惹かれ、自分の志向と合わない職場に転職し早期離職。 - 自分を過信する
→ 「自分は優秀だからどこでも活躍できる」と考え、社風やカルチャーを軽視してフィットせず苦戦。 - 実行フェーズへの理解不足
→ 戦略策定はできても、現場マネジメントや巻き込み力が足りず、事業会社で浮くケース。
成功事例の紹介
- ケース①:MBB出身者 → 日系総合商社の新規事業部門
商社の現場感やリスクテイクの文化に魅力を感じ、個社のアセットを活かした事業創出に貢献。3年後には子会社役員候補へ。 - ケース②:Big4戦略部門出身者 → シリーズBのSaaSスタートアップCOO
コンサルで培った営業戦略・KPI設計スキルを活かし、売上10倍成長を牽引。将来的にはCEOへの昇格も視野。
これらの事例に共通するのは、「自身の強み」と「転職先で期待される役割」が一致していたこと、そして「カルチャーフィット」を見極めた点です。
第5章:まとめ|自身のビジョンに基づいたキャリア選択を
戦略コンサル出身者の出口戦略は、一昔前に比べて格段に多様化しています。重要なのは、「選択肢の多さ」に惑わされるのではなく、自分自身のビジョン・価値観・強みに立ち返ることです。
特に30代前半は、「過去の延長線でなんとなく選ぶ」最後の年代です。このフェーズでどんな環境に身を置くかが、5年後・10年後の選択肢の幅を大きく左右します。
自分を俯瞰し、世の中の潮流と照らし合わせながら、納得感あるキャリア戦略を描くこと。それこそが、戦略コンサル出身者に求められる「最も重要な戦略的意思決定」といえるのではないでしょうか。

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